第7章 ふたつ 彌額爾(ミカエル)の語り ー人の望みの歓びよー
イーリスが笑い声を立てた。カールの人たらしは赤ん坊にも効くらしい。リーリエの背越しに小さな手が物欲しげに動くのがチラチラと見えた。
男気のある陽気な画商が腰を屈めて鳩のミカエルを拾い上げる。僕は反射的にミカエルの背中にしがみついた。そこがずっと僕の指定席だったからかも知れないし、もしかしたら違う理由があったからかも知れない。
例えば、僕の知りたい事が他に出来た、とか。
僕がここですべき事はすんだと、そう思ったとか。
僕は自由の名を持つ画商の袖に飛び移ってまんまと表へ出た。
天使と百合に与えられたミカエルの名前は、それからずっと僕のものだ。
知ってしまった祈りの歓びと共に。