第7章 ふたつ 彌額爾(ミカエル)の語り ー人の望みの歓びよー
幸せは必ずしも五感や体に宿るものではない。
それは心の奥に熾火のように埋もれて温かくあるものだ。
偏屈なエンゲルと快活なリーリエが好きだ。二人の子供が待ち遠しい。
そしてこの三人に幸せであって欲しい。
祈りは愛の形だ。
僕は雨垂れの身の上で、エンゲルとリリー、そしてまだ見ぬ二人の子供を愛してしまった。
願わくは、三人の幸せの中に、硝子玉に閉じ込められた鳩のミカエルと目にも見えない雨垂れのミカエルを迎えて欲しい。
見守るだけでいいんだ。側に居たい。
それは海の底に交わりたいと願い続けた僕が、初めて抱いた祈り、もしくは欲だった。