第7章 ふたつ 彌額爾(ミカエル)の語り ー人の望みの歓びよー
夏を楽しみにしているという二人の手紙のやり取りからすれば、答えはそれこそエンゲルの苦手な季節に出る。ならそれはもうすぐの事だ。
神がいなくても奇跡は起こる。カールとベアヒェンの出会いの奇跡。
あそこに神はいた?
ただ雨垂れの僕が二人を見守っていただけじゃないか。
エンゲル、泣いてないで顔を上げろ。神がいなくても幸せになれる。なれるよ。
君から音を奪った神に、何をこれ以上祈るんだ。エンゲル。
君には宝物が増えるんだよ。新しくやって来る天使こそが宝じゃないか。
リーリエが、カールが、ベアヒェンが、神より親しく君を守ってる。
…僕だって。僕だってそうだ。
泣かないでよ、エンゲル。胸が痛む。雨垂れの胸が痛むなんて知らなかった。不思議だ。不思議で、苦しい。