第6章 ひとつ 吉太郎の語り ー焦げ白銀(しろがね)という雨垂れー
くしゃくしゃ波を打つ栗毛に薄い唇、でけェ口、天狗みたような高ェ鼻。肌こそあえェくれェまっちろくて(青いように真っ白くて)頬ぺたも赤いが、造りを見りゃこいつァどうにも醜女だ。閉じた目ェまでご丁寧に垂れ下がって、札付きの醜女。
なのに焦ゲんヤツァ、あろう事かこう吐かしやがった。
「うっつい(美しい)女やのし…」
おでれェた(驚いた)拍子に俺ァ橋桁の窪みから滴った。
しくったと思ったときにゃあ、何のつもりか食っ付いて来やがった焦ゲ諸共、醜女が汲み上げたらしい桶ン水にピトンと交ざくっちまってた。
コンチクショウ!