第4章 弥太郎河童
ひとつ。
右指。これにて吾を謀った人を赦す。
呑まんでやるよ。お前の愛し子を。良かったな?喜べよ。
ふたつ。
左指。これを右の指と併せて吾に奉じられた女児の依代と為し、水槌を治る事とする。
つまり、お前のふたつ指で里人を宥めて、あの童子を親に返してやる訳だよ。わかるか?
何、よくわからない?
…はあ。まあいい。これも喜んでおけよ。
みっつ。
私のものに手を出すな、この阿呆の川童子。
お前の泣きどころを殴らせろ。
それで今度だけは、真っ更に戻して流してやろうよ。
主たる私のする事へ嘴を挟むものではない。
せめて次からはひと言断りを入れろ。
私は存外お前が気に入っているんだよ、馬鹿河童。
お前が私を嫌おうともな。んー、いや、嫌われれば嫌われる程、私はお前が気に掛かる。ふふふ。
おい、厭な顔をするな。お前、仮にも私の眷族だろう?え?
……目の汁を拭えよ、見苦しい。
ヒリヒリ、チリチリ。