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第3章 仰げば尊し



ストーブ消しとこうかな。
食って寝たせいか暑くなって来た。今なら冷たいオロCもウマイだろうな。冷たいアクエリならもっといいけど。













グランドの雪掻きしながら野球部とサッカー部が喧嘩してる。

グランドの使い方でまた揉めてんだな。
雪掻きした分の場所を使うことにしようって話になったんだよ、確か。
そんなんオレらが勝手に決められる訳ないのに、何か盛り上がっちゃったんだよなー。

卒業しちゃった豊キャプテンが珍しくカッカしちゃって、サッカー部のキャプテンやってた堅治くんも気が短いもんだから、つられてみんなで口ゲンカしながら雪寄せしたんだった。
オレらはまだ五年生だったから口悪いのもそんなでなかったけどさ、六年の口ゲンカは凄かった!さすがだなぁと思ったもんな!

こうしてみるとうるさいなー、野球部とサッカー部は。何かみんな猿みたいだぞ。

職員室の窓に先生たちが集まって、湯呑み片手に笑ってこっちを見てる。笑ってないで止めろっての。

赤い屋根に雪の風呂敷広げたみたいな校舎が松の木の緑に映えて、あー、もうすぐクリスマスだなぁって思ったのを覚えてる。くったくたの汗ダラダラで、それどころじゃない筈なのに、何だかうきうきしたんだった。

今時ないだろって薪ストーブ焚いてる職員室に招かれて、甘酒ご馳走になったのは冬の短い陽がとっぷり暮れた頃。

お茶呑んでるのかと思ったら、甘酒か!

副校長先生がストーブで作った甘酒は、麹ばっかり使った甘くてトロッとしたヤツで、うちのばあちゃんが酒粕で作るツンと酒臭い甘酒とは全然違う。
呑みやすい上に熱くて旨くて、みんなでおかわりした。

呑み終わったら雪掻きご苦労さん早く帰りなさいって追い出されて、さみーさみー言いながら康史んちの鈴木商店で肉まん買い食いして解散した。

康史はみんなが食ってるとこニコニコしながら見るばっかりで、自分は肉まんを食わなかった。人数分なかったから。
オレだったら暴れてたかも知んない。自分ちの肉まんなのに自分だけ食えないなんて、わかるけど腹立つじゃん。

いいヤツだなぁって思った。…チェッ。

わかってんだ、康史がいいヤツなのはさ。じゃなきゃ友達やってねえもん。

でも何かさ。何かさ。

もうちょっとヤなヤツなら良かったって思うときもあるんだ。

ごめんな、オレこそヤなヤツで!









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