第11章 斎児ーいわいこー
他日、若い雲水らの話から、様々なことが知れた。
寺に若い娘が現れるのは稀なので、皆少し浮き足だっているように思えた。
あの分限の材木商のところの娘さんは、幼い頃囲炉裏に突っ込んで火傷を負い、以来屋敷の奥に引き籠もっているという。妙な挙動が目立つ変わり者で、それもあって表に出して貰えないらしい。妙な挙動の目立つ変わり者。まるで私のようだ。
今回、本人たっての願いで、朝方人目につかないよう寺には決して上がらない約束で墓地周りを清める手伝いを許されたとのこと。
きっとさぞ熱心に頼み込んだのだろう。親心と世間体に閉じ込められ、屋敷の奥で何もかも諦めてひっそり暮らすにはあの人は若すぎる。
真黒い目、強い(こわい)髪。火傷に覆われた顔は意思が強そうで凛としていた。
名前は、節。
良い名前だと思った。あの人によく似合う。口に出して呼んでみたくなった。
節さんと。
怖いのにまた会いたいと思った。顔を見合わせて真向かいに立って、名前を呼んでみたいと思ったら捩れるように胸が焦れた。
あの黒炭の目は、そのときどんな風に私を見るだろう。
厭わしむだろうか。疎むだろうか。
それとも。それとも、もしかして和んでくれることはないだろうか。
私を受け入れてくれまいか。
同じ業を背負う者として。