第10章 丘を越えて行こうよ
そうだ、大嫌いだ、一也のバカ。隠し事して、こそこそして、仲間外れにして!
ずっと一緒に歩いて行きたいって言ったくせに…くせに…って、あれ?これは夢の話か。
「……夢…」
そうだ。あれは一也なんだ。
詩音が顔を上げたとき、佐藤塗装店の軽バンは既に走り去っていた。
「……そうかぁ……」
そうだよなぁ。…一也に決まってる…。
加奈子に促されて歩き出しながら、詩音は何とも言えない顔をした。
…変な夢みたな…。
笑い声がした。
空耳だろう。小さな一也と詩音は、大人になっただけで幽霊になんかなっていないんだから…。