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~短歌~

第8章 筑波嶺の 峰より落つる 男女川 恋ぞ積りて 淵となりぬる




たんと上を向いていた向日葵が、見飽きた風におてんとうさまから視線を逸らし始める。
打ち水のされた道路はぬるく、むわりと蒸した空気を一瞬だけ攫って行く。
蝉の声がジンジンと耳に付き、いつまでもいつまでも聞こえている気がする。
時折音が止まればはたと、蝉が鳴いていたな。とようやく気が付く。
黒い背も尾もじりじりと焼けるように熱を帯び、私もそろそろ一休みしようかと木陰を探した。

「天狐。」

尾の方から声が掛かり振り返ると、たくらみ事でもしているかのような笑顔。

「なんじゃ、シカマル。」
「羊羹、食ってかねぇか?」
「うぅ。食う。」

私が菓子に弱い事を知ってわざわざこの場で声をかけて来たのだろう。
真横には茶屋。
私が一休みしたいと思ったのは、この茶屋の風鈴の音を聞いたからだ。

「茶と羊羹二つ。」
「あいよ。」

最近ずっとそうだ。
狐のままでは食えないようにと意地悪をする。
前までは、買って何処かで食うようにしていたのに、シカマルは揚々と店の中に入り私を手招きするのだ。

「変化して入ってこい。」
「だったらいらん。」
「出来ねぇのか?」

この始末どうつけるべきか?
言い負かされたままでは自尊心が許さない。
最近通り、中途半端な人に化け恐る恐る茶屋に入りシカマルの前に座る。
出された羊羹と茶は良く冷えており、美味かった。

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