第15章 嘆けとて 月やはものを 思はする かこちがほなる 我が涙かな
大いに盛り上がった焼き肉大宴会は、夜も深くなって来た頃ようやくお開きとなった。
砂の三人を宿に送ってくる。とやかましい奴らから三人を連れ出し、早々に宿への道を歩く。
天狐はいのとサクラと話をしていたから、近づくべからず。と置いてきた。
「今日は楽しかったよ。ありがとうシカマル。」
「いや、すまなかったな。なんか煩くて。」
「いや。全然。ほら、見てみろ。我愛羅とカンクロウも楽しそうで何よりだ。」
後ろを振り返るテマリに釣られて振り返ると、仲良く並んで歩くテマリの弟二人の姿。
以前の我愛羅たちからは考えられない光景だろう。
ナルトのおかげと言うべきか。
「風影になって心労絶えない弟を、たまにはあんな騒ぎに連れ出すのも悪くないよ。」
「はは、息抜きになったかどうかは保証しねぇよ。」
「なったさ。」
柔和にほほ笑む横顔は少し意外だと思った。
こんな顔もするんだな。
「礼を言う。」
「いや、礼ならあいつらにしてくれ。俺は何も。」
俺の方に笑顔を向けてくるが、その笑顔の中になぜか少しだけ寂しそうな色があった。
疑問に思ったが、目の前は宿。
ここでいい。とテマリが言い、三人と別れて家路についた。
「ふぅ。」
漏れたため息が白い筋を作る。
不思議と寒いとは感じないが、鼻から入る冷えた空気が肺を冷やし、寒いなぁ。と考えてしまう。
すっと冴えた脳みそが、先ほどのテマリの表情の意味を考えだす。
天狐の事だろうか?
仕事の事だろうか?
我愛羅のことだろうか?