第13章 鬼の正体
先程まで自分を襲っていた四鬼は死んだ。ふと見た刀の刀身は、また紅色へと染まっている。力を吸収するごとに色を増しているのだろうか?
そんなことよりも、今は目の前の鬼の事だ。今まで出会った鬼と違う、櫻子を玉依姫と知るとまるでずっと探していたとでも言いたげに触れて来た。それだけではない、本来は仲間であるだろう四鬼を躊躇なく殺したのだ。
五鬼という鬼、敵なのか? それとも……味方なのか?
「殺生丸さん、あ、ありがとうございます……」
「礼を言うのは、まだ早い」
「痛いじゃねぇか、ったく……」
五鬼の身体は、首がないまま立ち上がる。痛みなどない、という具合に五鬼は自らの首を拾うと普通にくっつけた。
「貴様……今までの鬼とは、違うな?」
「個々、俺達鬼には特殊な能力がそれなりに備わっている。けれどそれは、自分たちが使うような代物じゃない奴がほとんどだ。だが俺は違う」
五鬼は狂った瞳で、ただ櫻子だけを見つめている。
「俺は羅刹桜牙でないと死ねない。その他でつけられた傷は、全て癒えてしまう。なぁ……玉依姫、俺と愛し合おうぜ? その刀で俺と血を流し合おう!! 殺し合うことこそ、最高の愛だと思わないか!?」
「……っ、くっ狂っています! そ、そんなこと……」
「狂ってる……? お前が教えてくれたんだぜ、玉依姫」
「え……?」
五鬼は舌なめずりをする。
「お前が倒してきた全ての鬼は、玉依姫から生まれたんだからなっ!!!」
櫻子の心臓は、恐怖と不安で高鳴り始める。