第13章 鬼の正体
「俺はこの時をずっと待っていたのにちっとも玉依姫ときたら、顔を出しやしない。さっさと四鬼も殺してくれないとさ、俺がお前の前に出てこれないだろう? ああ、でももうそんなことを気にする必要はないな。何故なら四鬼は俺の手で、死ぬからだ。けれど玉依姫、お前が刀に力を取り戻そうってことなら今すぐその刀でこいつを刺せ」
「な……何を言っているのです?」
「刺せ。仮にも玉依姫ならさ」
五鬼は刀を抜くと、四鬼の身体を櫻子の近くへ倒す。すると「しょうがないなぁ」と嬉しそうに恍惚の表情を浮かべながら、櫻子へと近付く。羅刹桜牙を持つ櫻子の手を掴み上げて、無理に立たせる。肩の痛みに彼女が顔を歪めると、五鬼は優しく櫻子を抱き寄せた。
「ごめんな? 痛いか? 大丈夫だぜ、もう俺がいるから心配ない」
櫻子の手に自らの手を重ねて、そのまま四鬼の身体を羅刹桜牙で貫く。
「お、己……玉依姫めっ!!!」
四鬼はその言葉を最後に、灰へと還っていく。すると五鬼はすぐに重ねていた手を離し、櫻子の身体をもっと強く抱き寄せて彼女の顎を掴んだ。
「おい、大丈夫か? ああ怪我してるな、肩と背と……酷いのは肩の傷か。どうしようかなぁ、俺の調合した薬草じゃその傷を簡単に癒すことは出来ないしそれならいっそ肩落とす? 痛いとこから切り離す? あ、それ名案」
「はっ離して下さい! やめて……っ、下さい!」
「あああいいねそういう強気な態度! 俺凄く好きだよ、人間のくせに強がって俺に刃向うなんてやっぱり玉依姫はこうでないとね? あの時死んだ玉依姫はつまらない女だったな……でもそれに殺されちゃぅた俺は、相当駄目なやつだよね? いやでもあれはそれでよかったんだ。そうしたことによって、次の玉依姫に会えたんだから!」
「櫻子を離せ、この下衆鬼がっ!」
殺生丸が闘鬼神でいきなり五鬼の首を落とす。同時に、身体は重力に従い地へ崩れ落ちる。その前に、殺生丸は櫻子を奪還しその胸に抱いた。
あまりに唐突過ぎる展開に、櫻子の頭は追いつかない。
何が起きている? 一体何が……。