第13章 鬼の正体
「あれは……」
一番に殺生丸が声を発した。そこにいたのは、一人の男が尋常ではない様子で一本の刀を持ち、人を斬り笑っている姿だった。
「あ、あれが鬼ですか?」
「そうです! ああ、どうしよう……屋敷が」
女性は怯えた様に、櫻子の背後に身を隠す。すると殺生丸は躊躇うことなく、その鬼と思わしき者へと近付いていく。
「殺生丸さん!?」
「あの鬼はお前の刀とは関係のない奴だ。すぐに済ませてくる」
殺生丸は瞬時に鬼の前へと降り立った。鬼はすぐさま、殺生丸へと視線を向け刀を構えた。
「おお、貴様……殺生丸か」
「灰刃坊(かいじんぼう)……お前、刀はどうやら打ちあがったようだな? しかし悟心鬼の持つ妖気に支配されたか。ふんっ、自ら作った刀に取り憑かれるとは……情けないものだな」
「ふははっ! 笑止! 刀を持たぬお前に、この灰刃坊を倒せるか……!?」
灰刃坊はまがまがしい妖気を纏った刀を振り上げ、殺生丸の方へと向かって来る。殺生丸は顔色一つ変えず、腰にさしていた羅刹桜牙を抜いた。
「刀ならここに一振りある。さて……その刀、なんという? 聞かせてみろ。お前が……死ぬ前に」
「この刀は宝剣・闘鬼神(とうきじん)だ! そうだ、お前がよこした悟心鬼の牙で作った俺の最高傑作だ!!」
「そうか……」
闘鬼神の攻撃を避け、殺生丸は羅刹桜牙を舞うように振う。