第13章 鬼の正体
「どうかしたのですか!?」
「あ……ああ……お、鬼が……鬼が我が屋敷を」
「鬼?」
「ど、どんな鬼ですか?」
「わかりませぬ……人の形をした鬼が……」
「殺生丸さん、もしかしたら……」
「羅刹桜牙に関係しているやもしれんな。女、お前案内しろ」
「え……し、しかし」
「案内せぬことには、行けぬ」
「はっはい……」
女性は辛そうな表情を浮かべて、必死で立ち上がる。それを見た櫻子は、女性の身体を支える。
「あの、この人一見怖そうに見えますが……理由もなく誰かを傷付けたりはしません。なので、安心して案内してもらえますか? すみません、折角逃げて来た人にこんなことをお頼みしてしまって……」
「大丈夫です。もとより助けを呼ぶために、この里近くまで下りて来たのですから」
「ありがとうございます。では、行きましょう」
三人は森の奥を進んでいく。頭上の方では、灰色の煙が上がっているのが見える。櫻子の心の内は、不安で侵食されていく。彼女の前を歩く殺生丸は、未だに羅刹桜牙を腰にさしたまま。もし本当に、刀に関係する鬼であれば……自らが羅刹桜牙を殺生丸から奪い取り、斬らねばならない。
そうは思うのに……先程の彼の言葉がどうしても気になって、迷いが出る。
――殺生丸さんは、私が刀を振るうのを嫌っているのでしょうか……。
振り向く様子もなく、殺生丸はただ先を歩いていく。煙も炎の匂いも強くなり始めた頃、ようやく三人は森を抜けた。