第13章 鬼の正体
殺生丸の強い瞳に見せられて、櫻子はただ口を閉ざし続けている。それでも……櫻子はおずおずと、口を開き始めた。
「せっ……殺生丸さんは、どうしてこんな……ことを」
「それは私にもわからぬ。ただ……本能のまま、といえばお前は満足するのか?」
「それではまるで……」
「"獣"のようだ、とな? 忘れているのではないのか? 私は、人間などとは違う。半妖とも違う。完全な妖怪の血を受け継ぐ者、理性はあれど私もただの獣と相違ない」
「私が未熟だから……からかっているのですか?」
「何故そんなくだらなぬことをせねばならん」
溜息をつきながら、殺生丸は櫻子からゆっくりと身体を離した。
「殺生丸さ……」
「動くな。人の声がする」
「え……?」
森の木々を掻き分け、転げ落ちるように近付いて来る誰かの足音と気配。薄らと櫻子もそれを感じながら、息を潜める。しかしその行動も虚しく、突如一人の女性が二人の前に転げ出て来た。
「え!?」
「いっ……こ、ここは……貴方達は?」
女性は泥だらけになりながら、なんとか櫻子達を見上げる。殺生丸は眉間に皺を寄せ、その女性を睨み付ける。櫻子はそんな殺生丸には気付かず、慌てて女性へと駆け寄った。