第12章 変化の兆し
「貴様は、力の事をどう思っている?」
「……私のお父さんは、いつもその手にある力を驕ってはいけないと言い続けてくれました。私にとっての力は、振うものではなく包み込むもの。そう……思っています」
「包み込む、とな?」
「はい。私は誰かを守る為に力を求め、技術を学び今日までやってきたつもりです。その気持ちはこれからも変わりません。どんなにあの刀が強いとしても、私は……誰かを蹴落としたり傷付けるためではなく、守る為に使いたいです」
「そうだな……やはり、お前はそうくると思っていた」
あれほどの力を手にしながら、それでも櫻子の語る自らの意思。桔梗はその思いがけして嘘ではないこと、口から出まかせではないことをきちんと理解しているらしい。
目を見ればわかる。と言ってしまうと胡散臭いのかもしれないが、それでも桔梗はそう思っていた。
「お前は殺生丸から刀を奪い返すのか?」
「そうですね……どうしたら、いいのでしょうね。あの刀をけして殺生丸さんや、妖怪の手に渡すわけにはいかない……そう思ってきました。けれどいざこうして奪われてしまうと、どうすることが正しい事なのかわかりませんね」
「刀をもってして、殺生丸が全てを壊そうとしたとしてもか?」
「あの人は……そんなこと、しませんよ」
櫻子はにっこりと笑う。桔梗は反対に、きょとんと目を丸くした。途端、ふっと笑い飛ばす。