第12章 変化の兆し
真夜中、不意に目が醒めた櫻子は気分を入れ替える為にと、傷もまだ癒えていない状態で上着を羽織って外へと出る。綺麗な白い月が上空で輝いていた。
「櫻子か」
「……桔梗、さん?」
ゆっくりと姿を現したのは、あの日別れて以来一度も会っていなかった桔梗。相変わらずの様子の彼女に、櫻子は心なしかほっとしていた。
「羅刹桜牙はどうした」
「え……?」
「腰にない、ということはついに誰かに盗られでもしたか?」
「その……お恥ずかしい話なのですが」
「いい。こっちに来い、話くらいなら聞いてやろう」
村はずれの森の方へ歩いていく桔梗に、自然と櫻子は着いていく。話を聞いてほしいというよりかは、誰かに何かを聞いてもらいたかったのかもしれない。そう思い始める櫻子に、桔梗はちらりと後ろを向いて櫻子の様子を伺っている。
少し村から離れた森の中、大きな大木に桔梗は背を預けた。
「さて……櫻子、何があった? 話せ」
「はい……」
細かいことは抜きにして、櫻子は出来るだけざっくりと噛み砕いて桔梗に事の有様を話した。桔梗は何かを考えている様子を浮かべながら、真剣に櫻子の話へ耳を傾けていた。一通り櫻子が話し終えたところで、桔梗はようやく口を開く。