第11章 守る意味を求めて
「お前に怪我をさせた奴は誰だ!?」
「え……?」
「やっぱり、殺生丸なのか?」
その言葉を合図にするかのように、櫻子の脳裏に羅刹桜牙を掴み自分に傷をつける彼の姿を思い出す。同時に、櫻子は黙って拳を握りしめた。その瞬間を、かごめは見逃さなかった。
「犬夜叉、今はやめておきましょう」
「何言ってんだかごめ! 櫻子が怪我をさせられたんだぞ!? そいつにしっかり落とし前つけねぇと、俺の気が済まねぇ!!」
「犬夜叉には関係ないでしょ」
「関係なくねぇ! 櫻子は、これでも俺にとっては大事な仲間の一人なんだ。一緒にいた時間はすげぇ短いし、仲間なんて呼べねぇのかもしれねぇが……俺に関わった以上、櫻子の問題に俺は首を突っ込む!」
「犬夜叉、おすわり!」
「ぎゃふんっ」
かごめの『おすわり』と共に、犬夜叉は顔から地面へ沈んだ。かごめは大きく溜息をつくと、優しく櫻子へと声をかけた。
「あのね、言いたくないこともあると思うから無理に言わなくていいのよ」
「あ……いえ、その……私は」
「犬夜叉の奴ね、デリカシーがないの。だから気にしないで! 本当に肩の傷は酷いから、少し休んだ方がいいと思うわ。此処は安全だから、安心して休んでてね。ほら、犬夜叉行くわよ」
「待てこらかごめっ!!」
いつの間にか言い合いを始めた二人は、櫻子を置いてその場を後にした。一人きりになった櫻子は、肩の傷をそっと手で押さえながら上半身だけ起き上る。そして苦しそうに言葉を漏らした。
「殺生丸さん……」
消え入りそうな声で、俯いていた。