第2章 絡み付く運命
伊澄はこの状況下であるにも関わらず、櫻子に頭を下げた。
「お願い致します玉依姫様! 最早我々の力では、あの刀を制御することは不可能で御座います。貴方の神通力と霊力があれば、あの刀を再び封印することも……」
「そんなことを急に言われましても……きゃっ」
地響きは更激しさを増す。一体この建物に何が起きているのか? 伊澄は櫻子の手を引き、その場からの移動を始める。軋む木の感触など今は気にならないほどに、駆け抜けた廊下から見えた外。
「あれは……っ! なんですか!?」
「妖怪のことですか? 刀の気配を察知した妖怪共が、ああして殺し合いをして我先にと刀を取り合う為争っているだけで御座います」
「その刀を持っていると、この建物が崩れてしまうのでは!?」
「そんなことはよいのです! あれが妖怪の手に渡ることの方が、とても恐ろしい事ですから」
伊澄に案内されるままに、櫻子は地下へと降りていく。蝋燭の灯りで照らされた道は淡く濁っており、僅かに櫻子に恐怖を植え付ける。思わずぎゅっと手に力がこもる。
地下へと続く階段を降りると、大きな扉が二人を待ち受けている。難なく伊澄が扉を開けると、部屋の奥にある石段に一つの刀が地に刺さっていた。そこで初めて櫻子は気付く。
――あの刀から、只ならぬ振動を感じます……。
地響きの正体は、どうやらこの刀らしい。