第11章 守る意味を求めて
「奴を止めてやる刀が、私には必要なのだ……」
彼の瞳は、遠く誰かを思い浮かべているようにも思えた。
川を辿り、下流付近で櫻子の身体は流れ着き沖へ浮かんでいた。辺りは血が滲み、痛々しくも血の混じった水に浸りながら未だ倒れている。
「櫻子……?」
ふと、誰かが彼女の名を呼ぶ。
森の中から出て来たのは、赤い衣を纏った男……犬夜叉だった。
「やっぱりな! 櫻子の匂いと共に血の匂いがすると思って来てみれば……おい! おいっ、櫻子!!」
犬夜叉の後方では「待ちなさい犬夜叉!」とかごめの声も聞こえてくる。それを無視するように、犬夜叉は櫻子の身体を優しく抱き上げ川から引き上げた。
「身体が冷たくなってやがる……しかも何だ、この大きな刀傷は。誰かにやられたのか? にしても……この傷、躊躇なく斬ってやがるな……一体誰が」
「こら犬夜叉! いきなり走り出してどうして……って、櫻子ちゃん!?」
「かごめ、一旦村に戻るぞ。このままじゃ、櫻子の命があぶねぇ」
「え、ええ……」
犬夜叉はかごめと共に、櫻子を連れて急いで村へと走っていた。妖怪でもない櫻子が、いつまでも傷を放置したままでは出血の関係で命に関わるのは誰もがわかることだろう。
村に着くと、すぐに櫻子の手当てが行われる。一向に目が醒めない櫻子に、手当てが終わってからもずっと犬夜叉は傍で様子を見つめていた。
見兼ねたかごめが、犬夜叉へ声をかけにやってくる。