第11章 守る意味を求めて
「何を……っ!」
「二度は言わぬ。言ったはずだ、貴様にこの刀は相応しくないと」
「ほざけ……っ!!」
「人間如きが……」
殺生丸は躊躇うことなく、羅刹桜牙で櫻子の肩を斬り付けた。傷つけられた肩は血が滲み、櫻子は傷口を服の上から抑える。
「この刀に最も相応しい人間が誰か、教えてやる」
殺生丸が勢いよく、櫻子の身体を蹴り飛ばす。
そのまま地につくはずの身体は、ぐらりと後ろから落下する。櫻子が顔を青ざめて後方を見ると、あろうことか後ろにあるのは崖と下には川。
「貴様ああああッ!!」
「……この刀に相応しいのは。櫻子だけだ」
櫻子の身体はみるみる内に落下速度を上げ、勢いよく川へと沈んだ。それを殺生丸は見届けると鼻で笑って悟心鬼の頭がある場所へと向かう。
悟心鬼の牙の辺りに、光る何かがあることに気付くしゃがみ込んで確認する。
「これは……鉄砕牙の破片か?」
破片を掴み取り、殺生丸はまじまじと見つめる。破片に沁み込んだ匂いに見覚えがあり、間違いなくこれが鉄砕牙の破片であることを知る。
「私には刀が必要だ」
羅刹桜牙をむき出しのまま腰にさすと、殺生丸は悟心鬼の頭を掴み上げた。
「……鉄砕牙を砕いた鬼の牙か、面白い。奴に刀を打たせれば、それなりのものが出来上がるやもしれんな」
悟心鬼の頭を持ったまま、殺生丸は霧のように何処かへ向かい消えていく。最後にぽつりと、まるで独り言のように言葉を残して。