第10章 紅色の刀身
途端に、櫻子の体内でどくんっと大きく鼓動が鳴る。全身の血が沸き立つようで、初めての感覚に櫻子は戸惑うが今は気にしてもいられない。
――力を貸してやろうか?
「え……?」
どくんっ
高鳴る。すると、がくんと櫻子は刀を握ったまま脱力した。その様子に悟心鬼は首を傾げながら、くつくつと笑う。
「ははっ! どうした!? この悟心鬼に恐れでもなしたか!?」
悟心鬼の腕が振り上げられ、櫻子へと降りてくる。殺生丸はぐっと地を踏み、櫻子の元へと駆けようとするが……彼女の香りが変わったことで動きを止める。
「櫻子……?」
悟心鬼の腕が、一本飛ぶ。
「何……っ!? 心が……読めなかっただと!?」
櫻子は顔を上げ、伏せていた目を開ける。その瞳は、紅蓮のように赤く染まっていた。
「お前……一体何者だっ!!」
「……何者、だと?」
櫻子の纏う雰囲気が変わっていく。櫻子とは違い、優美に構えては冷えた瞳で悟心鬼を睨み付ける。
「私が何者だと……? 私は、玉依姫……この羅刹桜牙に運命を食われた、巫女だ」
羅刹桜牙が声の呼応するように、紅色へと染まっていく。