第11章 守る意味を求めて
「玉依姫なのはわかってんだよっ! さっきと違う雰囲気纏いやがって……だからお前は何者なんだと言ってんだ!」
「頭の悪そうな鬼だな。三枚におろすぞ」
「怒りも恐怖も何の感情も読めないだと……!? 人間のくせに、どうしてだ! お前は妖怪か何かかっ!!?」
「……煩い奴だ」
櫻子は大きく横に刀を一振りした。すると、炎の斬撃が悟心鬼を襲う。間一髪それを避けると、悟心鬼は顔を歪め再び櫻子へと問う。
「お前は……」
「玉依姫、紅葉。それが私の名」
一瞬ふわっとした雰囲気を醸し出すが、すぐにその空気も散り彼女は地を蹴った。今までの櫻子とは違った太刀筋を見せるその姿に、遠くで見ていた殺生丸は食い入るようにその様を見つめていた。普段の櫻子では見ることのできない、迷いのない太刀筋。その意思にまるで刀が答えるように、紅色の刀身は徐々に悟心鬼を追い詰め始める。
「このっ……人間風情が!!」
雰囲気が変わった櫻子の動きは、どうやら悟心鬼には読めないらしい。一層羅刹桜牙が呼応するように濃く刀身が染まる。
「教えておく。これが羅刹桜牙の、真の力……!!」
大きく櫻子は刀を構えると、下から斜め上へ向かい空を斬るように刀を振った。