第10章 紅色の刀身
「遠慮は……しません。参りますっ! 奥義・絶円破ッ!!」
かまいたちが巻き起こる。しかしその風は、悟心鬼の身体を少し傷付ける程度で大した傷には何故か至らない。
「効いてない……っ!?」
「厄介な風だな……だが」
悟心鬼は腕を一振りすると、一気にかまいたちは散り無に還ってしまった。
「玉依姫、お前今どうしてかまいたちが、と思ったな?」
「え……?」
「俺はな、相手の心の内が読めるんだ。お前が例えどんな攻撃をしようと、俺には効かん」
「櫻子」
殺生丸は素早く櫻子の腕を引くと、その場を一気に駆け抜け遠ざかる。
「殺生丸さんっ!?」
「草木が邪魔でお前のかまいたちが本領を発揮できぬ。見晴らしのいい場所まで、出るぞ。どうせ奴は追って来る」
「あ……はいっ。さっきの女性は大丈夫でしょうか」
「放っておけ……」
櫻子は心の中で、女性の安否を祈った。
二人は森を抜け、見晴らしのいい場所まで飛び出してくる。華麗に降り立つと、殺生丸は櫻子の手を離した。
「もう逃げられないぞ! 玉依姫っ!!」
悟心鬼も後を追い、櫻子達の前に飛び出してくる。心を読むことが出来るということは、つまりは櫻子の太刀筋は全て見切られてしまうということ。ではどうするべきか? わかっていても避けようのない技でも使うか、あるいは心を無にして戦うか。そんなことが……出来るのか。