第10章 紅色の刀身
早朝から朝靄の中、櫻子は刀の手入れをしながら自主練をしていた。
あの後、無事に邪見達と合流した一行はまたあてもなく旅を続けている。相変わらず殺生丸は目的を口にすることもなく、彼が行く先へと皆着いていく。それでいいのか、そんなこと櫻子が判断できるはずもなく。
柄を握れば重みを全身に感じることが出来る。目を閉じて風を感じてみる。ふと小枝を踏む音が耳に入って目を開けた。
「殺生丸さんですか……?」
「よくわかったな」
「少しずつ……殺生丸さんの気配、というのを感じられるようになりました」
「なるほど……ということは、今度からは気配を消して近付けということか」
「気配を消されると、後で驚くので出来ればご遠慮願いたいです……」
殺生丸は櫻子を見つめる。様子を伺いに来たのか、それとも冷やかしに来たのか目的もわからない櫻子は殺生丸の視線から逃げるように自主練の続きを再開する。