第8章 争いの風
「殺生丸さんっ!」
思わず櫻子は刀を抜いた。自ら得た力で、なんとかしてあの竜巻を相殺できないものかと考える。それか、もしあの竜巻を斬ることが出来れば……。
途端、殺生丸は振り返り櫻子をそのまま抱えて飛び退く。後ろの方で邪見の慌てる声と共に、阿吽に乗った邪見とりんも竜巻から逃げるように飛び退いた。
やはりこの竜巻は、殺生丸の今持つ攻撃では消せないものなのか。そう考える櫻子は小さく覚悟を決めるように、ぎゅっと刀を握った。そのまま殺生丸と櫻子は攻撃を避けた後、軽やかに地へと足をつける。
「殺生丸さん、私にやらせて下さいっ」
「貴様が……? 満足に一人で戦えぬ小娘が、二体相手にするというのか?」
「そ、それは……私の腕では、難しいとは思うのですが……せ、精一杯やりますから!」
「……一体」
「え?」
「一対一なら、どれだけやれるか言ってみよ」
「あ……えっと、一対一なら自信があります! 絶対……負けません」
「その言葉、忘れるな」
殺生丸が櫻子の隣に並ぶ。二体の鬼を睨み付けながら、静かなけれどぴりぴりと全身を焼き尽くすような緊張感がその場に現れ始める。
「へぇ……二対二でやろうっての?」
「面白そうじゃないか、三鬼。アタシらで全員ぶっ殺してしまえば、あの羅刹桜牙はアタシらのもんだ!!」
「よし、全部全部ぶっ殺してやるからこいよっ! 玉依姫、殺生丸!!」
櫻子はしっかりと呼吸を整えると、綺麗に構える。
「では……参りますっ!!」
戦いの幕開け。