第8章 争いの風
何度目かの夜。再び殺生丸達と合流した櫻子だったが、初めの時とは違う面子に少しだけ寂しさを感じていた。
――殺生丸さんは、人間のことが嫌い……なのですよね。なのにいつの間にか、可愛らしい女の子を連れているなんて……。
そう、櫻子が見たのはりんの存在。あんなにも人間の自分に嫌悪感を見せていた彼が、意外にも穏やかな表情を浮かべてりんと話しているのだ。それが堪らなく不思議で堪らなかった。
櫻子が空を見上げれば、月は雲に覆われ何処までも暗い闇だけが広がっていた。焚火をしながら、一行は火を囲む様に座って各々の休息を取っていた。櫻子が視線を焚火に戻せば、ぬくぬくと暖まりながらうとうとしているりんが視界に入る。
「りんちゃん、眠いのですか?」
「ん……? 櫻子様? ううん、りんは大丈夫……だよ」
「無理はしない方がいいのですよ。明日もきっと、沢山歩くのですから」
「うん……」
こくりこくりと、首を垂れ始める。すると、凛とした声が聞こえて来た。
「りん、眠いなら早く寝ろ」
「ん……はい、殺生丸様」
殺生丸に言われてしまっては従うしかないのか、それとも彼だからなのか、りんは大人しく横になった。気付けばすぐに可愛らしい寝息が聞こえてきて、櫻子はそんな彼女がなんだか平和の象徴のように思えてふっと微笑む。
邪見も今日は疲れているのか、一番に寝入ってしまっている。