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犬夜叉 一重梅ノ栞

第7章 見えずとも聞こえずとも



「また、会えましたね。殺生丸さん」

「……此処で何をしていた」


 ずっと一緒にいるなんて約束など、交わしてはいないのに。探してほしいとも言っていないのに……それでもただ櫻子は会いたいと願っていた。彼に。殺生丸に。


「殺生丸さんが見つけてくれるのを待っていました。と言えば怒りますか?」


 冗談のつもりで櫻子はそう投げかける。本当なら、あの時無事だったのかとか、もう怪我は大丈夫なのかとか、聞きたいことは山ほどあった。

 でも今言葉にすべきことは、そのどれでもない気がして。

 どうして会えたのかなんて、それはもう……。


「声が、聞こえていた」

「殺生丸さん……?」

「その声が、煩かったのだ。ずっと、ずっと響いておった」

「……」

「私を呼ぶお前の声が、耳障りだった」


 殺生丸は徐に櫻子へと、手を差し伸べた。


「連れて行ってやろう、もう一度だけ。次はない」

「……はいっ!」


 その手を取る。


 例えばもし、心と心が繋がっているのだとしたならば。例え何処にいようとも。


 きっと、見つけられる。



 櫻子の手の中にある刀が、かたりと動いた。

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