第7章 見えずとも聞こえずとも
「この力を、皆の為に使いたいの。妖怪の襲撃に苦しめられている村を救うには、これしか方法がないの」
「私も巫女になる! きっと強くなってみせる! だから……っ」
「桔梗。私がもしも死んだ時は、村のことをお願いね? こんなこと……押し付けるようなものじゃないのだろうけど」
「大丈夫だっ、必ず守ってみせる……だから待ってくれ、紅葉」
今にも泣き出してしまいそうな桔梗が、紅葉へと縋りつく。それでも紅葉は優しく桔梗の髪を撫で、安心させるように優しい声色で伝える。
「桔梗、私ね……この命一つで皆を守れるなら、どうなったって構わないの」
どうして……。そんな思いが桔梗の中へと流れていく。もう止めることも、この現実を変えることも叶わない。いっそ何もかも壊れてしまえばいいのに。
桔梗の悲痛な思いさえも知っているかのように、紅葉は桔梗に言葉を託す。
「大丈夫よ……」
何処までも美しく、気高い紅葉の姿が桔梗の心の中に留まり続ける。けして消えない、いや忘れはしない。
彼女が消えた世界の果てで、桔梗は弓を握り締めていた。
◆
あの時と同じ、花が咲く。