第6章 下駄を鳴らし彼方
「過程はどうでもいい。とにかく、お前が玉依姫の魂を持ち、どういうわけかその刀を所持していると……目的はなんだ?」
「も、目的ですか!? えっと……玉依姫の使命である、刀の力を全て集めて封印する。それが、私の目的……だと思います」
「そうか……刀の封印が解けたと同時に、玉依姫の魂を持つ者を刀が呼び寄せたということか。そしてお前は再びその刀を封印すると? ははっ」
女性は喉を鳴らし、笑う。何がそんなにおかしいのか、理解できなかった櫻子は一人首を傾げた。
「櫻子、と言ったな。私の名は桔梗、見た通り巫女だ」
「あ……巫女さんなんですね、素敵だと思います」
「ふっ、何が素敵なものか……。お前、その刀を封印するということがどういうことなのか、わかっているのか? わかった上で、お前はそれを目的としているのか?」
「封印すると……何かまずいのですか?」
「その様子だと、何も知らないらしいな。まぁ、いい。その刀は所詮玉依姫しか扱えぬ刀。お前が好きにすればいいことだ……だが、けして誤るなよ。力の使い方を」
「そうですね、とても危険な刀だそうですし……気をつけます」
桔梗はじっと刀を見つめると踵を返し「櫻子」と彼女の名前を、ぽつりと口にする。櫻子はそれに反応するように返事を返した。
「桔梗さん……?」
「着いて来い、その刀のことをもっと良く知りたければ」
桔梗はゆっくりと歩いていく。森の奥へ、奥へと向かって。着いていくように白い生き物が、ふわふわと宙を泳ぐ。あまりに浮世離れしている桔梗の雰囲気と、纏う空気に自然と櫻子は緊張する。
だが刀のことを詳しく知りたいという欲求は、常に彼女の中に秘められていたもの。好奇心とやらには逆らえない。
薄暗い闇の中、桔梗の後を追うように櫻子は歩みを進めた。