第5章 戦国と現代
「櫻子ちゃん! これでいい?」
「はい、ありがとうございます」
布で刀を覆い隠すと、今度こそかごめに挨拶を終えて櫻子は見慣れた街を歩いていく。
自らの足でようやく辿り着いた自分の家は、ほんの数日いなかっただけなのに何故だか酷く懐かしく感じた。
道場の方へと近付けば、稽古を続ける者達の声が聞こえてくる。どんな顔で会えばいいのか……それさえもわからない櫻子は、家の方へと足を延ばす。
「櫻子……?」
呼ばれる声に反応して顔を上げれば、そこにいたのは櫻子の兄。
「透兄さん……?」
「櫻子か!! よく戻ってきたな! 一体お前、この数日何処で何をしていたんだ!?」
「話せば長くなるのですが……」
「まぁ、いいや。数日稽古をさぼっていたんだ、この俺が直々に稽古を今日つけてやる。すぐに準備をしろ……と言いたいが、少し休んだ方がよさそうだな」
「え?」
「酷く疲れた顔をしている。お風呂に入って、少し寝た方がいい」
「……はい、ありがとうございます」
深く透へと櫻子は頭を下げて、小走りで家の中へと入っていく。
「なんだか櫻子の奴、少し見ない内に逞しい姿に見えたが。気のせいだろうか」
時を同じくして、戦国時代の方では殺生丸はとある場所へ身体を休めていた。
森を抜け、ボロボロの身を抱えたまま。そこへ邪見が慌てた様に走ってきた。