第5章 戦国と現代
「さっきまでいた景色とは何もかもが違っています……」
「櫻子ちゃん! いる?」
「かごめんさん……?」
井戸の中から声がするので覗いてみれば、かごめが笑顔で手を振っている。どうやら本当にあの井戸を通して現代へと戻ってきたらしい。
「よかった! 無事にこっちに来れたのね。一時はどうなるかと思ったけど」
「はい、御心配をおかけしてしまい申し訳御座いません」
「いいのよ。ところで、ここから帰れそう?」
「幸い日暮神社は、私の自宅の近くになります。こんな偶然もあるのですね」
「偶然か……どうなんだろうねっ。あ、うちでご飯食べて行かない?」
「いえ、私は一度家に戻らなくては。心配しているかもしれませんので」
「あ――……それもそうね。じゃあ、二日後に此処を尋ねに来て! 私も一緒に戻るから」
「わかりました。それでは、また」
ふと櫻子は自らの腰に、刀があることに気付く。
「あの、かごめさん。何か大きな布を貸してはもらえませんか?」
「ん? なんで?」
「実はその……此方の世界に刀を持ってきてしまったので。その、隠して行きたいのですが」
「なるほどね。確かにそのままだと目立つかも! ちょっと待ってて」
見慣れた外の景色を櫻子も眺める。
――これが、私の生きる世界。
けれど瞳を閉じれば、容易に思い出せる。数日間の出来事を。そして腰にある刀が、何よりも嘘ではないという証となる。