第4章 繋がる血の濃度
「殺生丸さんっ!」
「櫻子、阿吽に乗れ! 殺生丸様を追うぞ」
邪見は阿吽という龍の頭を二つ持つ妖怪を連れてくると、櫻子に乗る様に言葉を投げかける。それに従うように阿吽に乗ると、邪見と共に阿吽で殺生丸を追う。
「この阿吽というのは、空を飛べるのですね」
「今はそんな呑気なこと言っておる場合か!! まったく、先程貴様は殺生丸様に斬られたというのに……平気そうな顔しおって」
櫻子が不意にもう一度自らの身体を確かめる。斬られた後は確かにない……けれど。
――しっかりと残っています。斬られたという”感覚”だけは。
それが意味するものは。無傷だったというのは幸いであったが、殺生丸が自分に刃を向けたというのがどういうことなのか……櫻子は静かにその現実を見つめていた。遠くに見える、殺生丸の背中を見つめながら。
「それでも、私はまだ殺生丸さんに認めてもらっていないのですね……」
「何か言ったか?」
「なんでもないですよ、邪見さん」
ただそれでも今は、殺生丸を追って空を駆ける。
暫く空を駆けていると、殺生丸が急降下する為それに習う。ようやく地を踏んだかと思えば、刀々斎が赤い衣に身を包んだ男の後ろに隠れていた。
その男、白銀の髪に頭には獣耳。妖怪なのであろう。
「やっぱりお前か! 殺生丸っ!!」
「ふんっ……面倒な奴だ。犬夜叉……」
どうやら犬夜叉という男と殺生丸は知り合いらしい。邪見が小さい声で「また始まってしまったか……」と呟いたことに反応し、櫻子が尋ねる。