第3章 魂の応え
「はぁっ、はぁっ……」
――やった、のでしょうか?
一鬼の姿はもうない。ぎゅっと刀を握り締める。斬り付けた時の感覚が手に残る。自然と自分の手が震えていることに櫻子は気付く。
「櫻子や! 大丈夫か!?」
「邪見さん……はいっ、この通り大丈夫なのですよ」
「うっ……別にわしはお前の心配などしておらぬからな!? か、刀の心配をしたのだ!!」
「……はいっ」
それでも櫻子は嬉しそうに笑う。邪見はふんっと顔を逸らしたが、何処か本当に安堵しているように見えた。
殺生丸は櫻子の前へと歩み寄る。櫻子がふっと微笑めば、殺生丸は驚いたように目を見開いた。
「……好きにしろ」
「え?」
「好きにしろと、そう言ったのだ」
「……! はいっ」
羅刹桜牙を鞘へとしまう。既に歩き出してしまった殺生丸の後を追うように、櫻子は駆け寄る。隣で殺生丸の顔を覗き込めば、相変わらずの無表情を浮かべていた。
ちらり。殺生丸が櫻子を一瞥すると、櫻子も視線を向け不意に口を開く。
「これから暫く、宜しくお願いしますね。殺生丸さん」
「……足手纏いになるようなら、捨てていくぞ。櫻子」
殺生丸は手を伸ばし、櫻子の頬の擦り傷に付着した砂を親指で拭う。痛みに顔を歪めた櫻子のことなど気にも留めず、ぐいぐい拭う。
「いっ、痛いです殺生丸さんっ」
「後で川に寄るぞ」
二人のやり取りを後ろから眺めていた邪見は、ぽかんと口を開けていた。