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犬夜叉 一重梅ノ栞

第3章 魂の応え



「諦めるわけにはいかないんですッ!!」


 鬼の影が一つ、櫻子達を覆う。


「殺生丸殿よ、邪魔するようなら貴様から殺してやろうか?」


 櫻子が羅刹桜牙の柄を握り直し、腰を落とす。刹那――斜めへと振り上げた切っ先が、一鬼の足を切り裂いた。


「なに……っ!?」

「一鬼さん、貴方の相手はこの私ですっ!!」


 殺生丸は思いがけない櫻子の攻撃で怯んだ一鬼を見て、爪から光の鞭を出す。その鞭は一鬼の片腕に巻き付き、動きを鈍らせる。


「殺生丸殿っ!! 何のつもりか!!!」

「……櫻子。貴様の力、今こそ示せ」


 殺生丸の言葉を耳に入れながら、櫻子は一鬼の懐に向かって行く。その姿はまるで戦場を駆け抜ける、美しい一筋の光。


「……奥義・絶円破ッ!!!」


 虚空を切り裂く刃。かまいたちが巻き起こり、一鬼の身体を巻き込んでは刻んでいく。一鬼の悲痛な断末魔を聞きながら、櫻子は目を逸らすことなく行く末を見守る。緊張と恐怖心、様々な想いがどっと彼女の中へと押し寄せる。

 息は乱れ呼吸が荒れていく。忙しなく呼吸を繰り返して、櫻子は流れる汗を手の甲で拭った。


 一鬼は散りになる寸前、櫻子へと言葉を放つ。


「我、一鬼。貴様に託そうこの力! 受け取るがいいっ、玉依姫がッ!!!」


 散りとなった瞬間、淡く緑色に光る玉が浮かび上がる。その光は羅刹桜牙の中へと消えていく。

 緊張がほどけたのか、櫻子はその場に座り込んだ。

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