第3章 魂の応え
――今、私に抜けと言っているのでしょうか?
心のままに、櫻子は羅刹桜牙を抜く。
「新たな玉依姫よっ!! 貴様はこれから俺に殺されるのだからっ!」
「……っ!」
想像以上の勢いで一鬼の腕が振り下ろされる。刀で受けようと構えるが、それよりも早く殺生丸が櫻子の身体を思い切り蹴とばした。痛みはあるものの、櫻子は一気に相手と距離が離れることとなる。
櫻子が先程いた場所は大きくくぼみが出来ており、まともに受けようとしていたことが愚かであったことを彼女は知る。
「殺生丸殿、何故人間の女を助ける? ははっ、情でも移ったか?」
「勘違いするな。あの刀は私のものだ」
「はっ、しかし殺生丸よ。奥義を刀に戻すことが出来るのは最早玉依姫のみぞ」
「なんだと……?」
「玉依姫自らが刀から切り離した力。それを再び刀に戻すことが出来るのは、同じく玉依姫か……その魂を持つ人間のみ」
一鬼が指をさす。その先にいるのは、やはり櫻子。
「そうさ、貴様だよ新たな玉依姫。お前しか今の羅刹桜牙を使いこなせる者はいない。どうする? それを知ったところでお前はどうするのだ? 玉依姫よ」
「……この刀を封印する方法はないのですか?」
「……。全ての奥義を元に戻せば自ずとわかる」
櫻子は刀をしっかりと握りしめると、覚悟を決めた眼差しで一鬼へと視線を上げた。僅かに一鬼は目を細めた。