第3章 魂の応え
櫻子と殺生丸の間に不穏な風が吹き込む。
「な、何を申すか!? この殺生丸様が人間の小娘などとつるむわけがなかろうが!!」
「でも貴方はこの刀が欲しいのではないのですか?」
「……その刀はまだ未完成品だ」
「え?」
殺生丸は櫻子を一瞥する。
櫻子も彼の視線の先にあるのが刀など知り、自らも刀へと視線を落とした。これが未完成品? どういうことなのか、彼女が理解できるはずもなかった。
「本来その刀は、五つの奥義を持つと言われている。しかしそれ程の強大な妖気が感じられない……恐らくその刀を封印した玉依姫が、いずれ封印が解けるのを予感して何処かへ力を分散させたのだろう。ふんっ、使えぬ刀などに最早興味などない」
「そうなのですか。……どうすれば、その五つの奥義を会得することが出来るのでしょうか?」
「さあな。そこまでは私も知らぬ」
再び背を向ける殺生丸に、無謀にも櫻子は駆け寄る。明らかに邪見は嫌な顔を浮かべ、殺生丸の顔色を伺った。
「信じてもらえないかもしれませんが、私は此処とは違うところからやって来ました。この鏡を通して」
懐にしまっていた鏡を取り出した。いくら櫻子が覗き込んでも、鏡は此処へ来た時のように光を放ちはしないし何も変化がない。つまりは、櫻子は現代へと帰れなくなったということ。