第2章 絡み付く運命
「これは……鞘、ですか?」
刀の鞘。手にした瞬間、ふと手にある刀へと視線を向ける。
「この刀の鞘……なのですか?」
言葉に反応するように、鞘がどくんと鼓動した気がした。刀を鞘に納め、櫻子は自らの腰へと刀をさした。同時に殺生丸が部屋の中へと入ってくる。
「逃げられはせんぞ」
「こ、このままだと私達は建物の下敷きになるかもしれません」
「ふんっ。だからどうした? それで死ぬのは精々貧弱な人間くらいだな」
「っ……」
二人の会話をぶち破るように、天井をぶち破って妖怪達が押し寄せてきた。それに殺生丸が視線を向けたのを櫻子は見逃さない。途端に部屋を飛び出した。
建物の外へと向かい、走る。その先に何があるのか、そんなこと今の彼女に考える余裕はない。生き残らなくては……生への本能が彼女をそうさせる。
ようやく建物の外に出たかと思えば、世界は地獄絵図と化していた。
多くの妖怪達がこの地に集まり、互いに血を流し死に絶える。しかし櫻子が出てきたことで、一気に妖怪達の視線は彼女へと一点に集中する。
「おい、人間だぞ! 刀を持っている。あれは羅刹桜牙に違いない! 奪うのだ!!」
「殺せ殺せっ!!!」
「……っ、どうしたら……」
櫻子は懐に鏡を仕舞うと、再び鞘から刀を抜く。刀身はまるで梅の花のように、淡い紅色をしている。手にした時は余裕がなく、そんなところに気にも留めなかったがあまりの美しさに思わず櫻子は見入ってしまう。
だがすぐに妖怪達が櫻子へと攻めてくる。緊張が走る。しっかりと刀を構える、一体の妖怪が手を振り上げ今にも櫻子を引き裂こうとやってくる。それを華麗に避けると、櫻子は思い切って刀を振り上げそのまま下ろす。