第2章 絡み付く運命
「あ、ありがとうございます」
「別に貴様を助けたわけではない。こやつにその刀を奪われてはかなわんからな」
じりじりと間合いを詰めようとしている殺生丸に、櫻子は刀を構え直し額に嫌な汗を滲ませる。剣道で剣術をある程度学んでいるといえ、所詮は剣道の術。人を斬るための術など知るはずもない櫻子には、この刀の存在はとても重く感じた。
それでも手を離さないのは、これを彼に渡してはならないという本能が叫ぶから。
突如、建物が大きく揺れる。先程とは違う地響きに櫻子は出口へと視線を泳がせる。このままでは建物が崩れるかもしれない、そんな思いが心の中に宿り始める。一か八か、櫻子は刀を大事に抱え一気に出口へと走り出した。
「殺生丸様! 女が逃げまする!」
「わかっている」
後を追うように殺生丸達も出口へと走る。三人は止まることなく階段を駆け上がった。
すると、外の方から何やら嫌な気配が集まっていることに。櫻子は無意識で察知する。きっと自らの中に眠る玉依姫の力のせいだろう。
――そうだ、鏡……!
自分がこちらの世界に来てしまった元凶、あの鏡がもし壊れてしまったらもう帰れないかもしれない。そう思った櫻子はすぐに鏡があった部屋へと駆け出した。勿論彼女の背後には、殺生丸達の姿。
鏡のある部屋に入れば、まだ鏡はしっかりとある。それを視界に入れると櫻子は大事にそうに鏡も抱え、部屋を出ようとするが突如足元に何かが転がってくる。