第15章 一重梅と共に
「奥義……紅蓮爆裂破(ぐれんばくれつは)!!!」
刀身が纏っていた赤い炎が、竜巻のように五鬼へと襲い掛かる。
一瞬の出来事だ。
五鬼は頭だけ残し、全てを竜巻で引き裂かれ燃え散っていく。あまりにも凄まじい力に、櫻子自身が瞬きを繰り返していた。
「え……」
「流石玉依姫の力……だな」
頭だけになった今、けれども羅刹桜牙の攻撃だからか再生することはもうなかった。
「最後の一撃って、切ないよなぁ……そうは思わないか?」
「……そうかもしれませんね」
「ああ……でも」
五鬼は静かに目を閉じた。
「悪くない」
砂のように五鬼は消えていった。
櫻子は手にしていた羅刹桜牙が鼓動をした気がして、刀身を見つめた。刀身は完全な紅色に色付いていた。
「それが本来の、羅刹桜牙の姿だろう」
「殺生丸さん」
闘鬼神を腰にしまい、櫻子と向かい合う。
「紅色の刀身、それが羅刹桜牙の名の由来なのだから」
「そうだったんですね……」
「どうやら、私も刀のことに関しては間違えて記憶していたようだな」
「力の事ですか?」
「そうだ。通りで、お前が紅葉とかいう女に乗っ取られた時……刀を普通に使えるというのに、これが特別である理由がわからないと思った」
「それもそうですね、力の源は玉依姫……なのですから」
「お前が振るうから、意味のあるものだったのだな」
櫻子は羅刹桜牙を鞘にしまうと、そのまま殺生丸へと渡す。それが最初の約束だったと、そういうように。