第15章 一重梅と共に
「けっ……上等じゃねぇか玉依姫っ!!」
五鬼の斬撃が蒼い炎を纏い、放たれる。櫻子は羅刹桜牙を振う。まるでその斬撃を相殺せんと、赤い炎の斬撃がぶつかる。
「……っ! 赤い、炎……?」
「ちっ……刀身が紅色に染まっているせいか」
「紅色に染まると、何かあるんですか……?」
「誰かに聞いてばかりじゃなくて、自分で知ればどうだいっ!?」
櫻子の足元を狙い、五鬼が斬撃を放つ。すかさず殺生丸が櫻子を抱き上げ、それを避ける。
「櫻子、いけるか?」
「はいっ! まだいけます」
櫻子の目の前にひらり、桜の花びらが舞い降りる。視線を上に向けると、そこには桜の木なんてないはずなのに……ひらひらと舞い降りてくる。
「狂い咲きの花……」
櫻子はそう呟くと、剣道の構えに入る。
――あの日初めて目にしたのも、桜だったような気がしますね。
口元を緩めると、息を吐いた。
同時に、薄らと赤い炎がまるで妖気のように刀身を包み込み始める。紅色に染まったまま、生きているように櫻子へと鼓動を伝える。
「玉依姫……ッ、お前!!」
「参ります……」
いち早く殺生丸が五鬼の間合いに入り込む。闘鬼神を振り上げ、五鬼は刀を弾き飛ばされる。
「……しまった!!」
ぐっと力を込め、櫻子は地面を蹴る。
降り注ぐ淡い桃色の花。染め上げる紅色がまるで血のように赤くて、けれど美しくて思わずその光景に見惚れてしまいそうだ。
舞い踊るように、彼女の頬を撫でる花びらは通り過ぎて地へ落ちていく。