第15章 一重梅と共に
「奥義・風雲雷月!」
「おっ、それ使えるのか!! いいねいいねぇ」
五鬼は恍惚の表情を浮かべながら、櫻子の攻撃を難なく避けてしまう。櫻子もある程度は予想していたのか、次の攻撃へと移る。
「……奥義・絶円破ッ!!」
風が吹く、五鬼の肌を傷付けるもうやはりけろっとした顔で笑っているだけ。
「余裕そうだな? 蒼龍破(そうりゅうは)……ッ!!」
「なんだと……っ」
殺生丸が次に闘鬼神を振う。刀身に蒼い光を纏わせ、蒼い龍を形どる衝撃波を放たれる。五鬼の肩を切り落としたが、先程見せた治癒でどんどん再生されていく。
やはり、櫻子の持つ羅刹桜牙でなければ五鬼を倒すことができないのか……。
「玉依姫っ! お前は何の為に刀を振るう? 意味もなく、やってきたことが無駄になり、お前にその刀を振る意味なんてとっくにないんじゃないのか?」
「……それは違います!!」
櫻子がいつも通り、刀を構える。心を鎮めて、精神を統一するように。殺生丸が見た櫻子の羅刹桜牙は、今まで見たことがないくらいに紅色に刀身を染め上げていた。
「貴方の言う通りだとは思います。でも私が本当に刀を振るうのは……初めから羅刹桜牙に力を集める為の、信じていた宿命の為ではありません」
「じゃあ、なんだっていうんだ?」
「……それは……秘密です」
そう笑って、櫻子は殺生丸へと視線を軽く向けた。その視線に気付いた殺生丸は、すぐに逸らしてしまった。