第15章 一重梅と共に
「どういうつもりだ。しかも、一人で」
「途中、桔梗さんに会いました。その……私に出来ることは確かに、ないのかもしれません。でも、私には殺生丸さんを置き去りで現代に帰ることは出来ません!」
「帰れ、邪魔だ」
「帰りません」
「戻ってきていきなりしつこいぞ。私が帰れといっている」
「帰りません!」
「何のだ……本当に」
殺生丸は大きな溜息をついて、羅刹桜牙を櫻子に徐に握らせた。
「殺生丸さん……」
「どうして、戻って来た……帰ってしまえば、お前が危険な目に遭うことはもうなかったのだぞ」
「いいんです。逃げようとした私なんて……貴方は必要ではないのかもしれません。でも何もかも置き去りにするには、私は知り過ぎた様に思います。玉依姫のことも、殺生丸さん。貴方の事も」
「櫻子……」
「桔梗さんに肩の傷を看てもらいました。先程よりも辛くはないです、だから貴方の隣でこの刀を振らせてもらえませんか?」
「それがお前の……心からの意思か」
「はい……っ」
「わかった」
二人は隣同士に立ち、互いに刀を構える。
「迷いは、ないな?」
「はい。もう、ありません」
今までとは違う、本当の覚悟を秘めた瞳で櫻子は五鬼を見る。すると、相手の顔色も変わる。
「その刀で、玉依姫の力でなければ俺を傷付けることは出来ない。それを知って、戻って来たのか?」
「……違います」
「そうか……。まぁ、いい。俺はお前と……殺し合えればそれでいいっ!!」
五鬼が先に仕掛けてくる、殺生丸が相手の刀を受け櫻子に目くばせする。