第15章 一重梅と共に
殺生丸は闘鬼神を構え、五鬼と対峙していた。
「玉依姫が逃げちまったら、俺を倒せる奴がいなくなるな……」
「それはどういう意味だ?」
「俺の刀を見ればわかる通り、これは鬼火を纏っている。つまりだな、普通の水じゃ当然消えないしこれに焼かれた奴は助かる術がない。これに一度でも斬られたら終わりってことだ」
「ほお……この殺生丸がそんな間抜けをすると思うか?」
「まぁ、しないだろうな。お前一人ならな?」
言葉を交わしながら、ぎりぎりの剣技を互いに組む。刀の弾き合う音が響いて、空は漆黒に包まれ白い月が浮かんでいる。
余裕の表情を見せる殺生丸と、怪しげな笑みを浮かべる五鬼。
「それはどういう意味だ?」
「あの玉依姫のことだ、きっとお前を助けるために仲間でも連れて戻ってくるんじゃないのか?」
「あの傷で戻ってくるなど、馬鹿がすることだろう」
「そうだよな……馬鹿だよなぁ」
五鬼が殺生丸の後ろを不意に指さす。視線だけを殺生丸が向けると、此方へと走ってくる櫻子の姿が見えた。
「なんだと……?」
「あちゃー、どうやら今の玉依姫は馬鹿みたいだぜ? 殺生丸よ」
「殺生丸さんっ!!」
櫻子が息を切らして駆け寄ってくる。楽しそうに五鬼が笑う中、一層険しい顔で殺生丸は櫻子を睨み付けた。