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犬夜叉 一重梅ノ栞

第14章 逃亡者の葛藤



「私……」

「櫻子、お前が本当にすべきことはなんだ? 答えてみろ」

「私が……本当に……したいこと……」

「真面目なお前のことだ。真面目に刀の使命を真っ当しようとしたのだろう、だがそれだけか? それだけのためにお前は今日まで刀を握ってきたのか」


 それは……たぶん違う。確かに刀の為にと、そう思いながらやってきたつもりだった。でも……。


 ――私だけでいいと言え。くだらん宿命も貴様の大切にする現代とやらも、いらぬと言え。


 あの時の殺生丸さんの言葉を思い返す。私はちゃんと、言葉を返せなかったけど本当は凄く嬉しかったんだ。


「桔梗さん、私いってきます! ちゃんと……自分の手で終わらせなくちゃいけないって……思うんです」

「羅刹桜牙で奥義を使えるのは、お前が玉依姫だからだ。あれは、玉依姫自身の力だからだ。わかるな?」

「……私は、あの人にずっと救われていたんです。拙い私を、支えて今日までこの旅に付き合ってもらっていたんだと思います」

「そうか……」

「とても、簡単なことだったはずなんです……私はそれさえわかりませんでした。駄目ですね」

「そうだな、真面目過ぎるな」


 桔梗さんは仕方ない、と言いたげに溜息をついた。


「全部、あの人にあげたいです」

「……いってこい」


 桔梗さんに背中を押されて、私は元居た方へと走っていく。どうして私がそうしているのか、他の人が聞いてしまえばつまらない理由なのかもしれない。

 逃げてしまった、情けない私を視界に入れたら殺生丸さんは怒るかもしれない。何の力にもなれない私を、嘲笑うかもしれない。それでも……。


 あの人と一緒に、全て終わらせて……それから……。


 それから、さよならと言えたら。

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