第14章 逃亡者の葛藤
「傷、見せてみろ」
桔梗さんはそっと私の肩に触れる。懐から包帯を取り出すと、小瓶から緑色の塗り薬らしきものを指につけ、傷口に塗り始める。だんだんさっきより、痛みが引いてきた気がする。
「それは私特製の薬だ。効果は申し分ないはずだ」
「ありがとうございます……」
「これからどうする? そのまま、犬夜叉のところへ行くか?」
私は俯いて、肩に触れる。痛みは……たぶん、大丈夫。
「私がやってきたことは、意味があるんでしょうか……」
「少なくともお前が自分という意思を持っていたから、紅葉の計画は失敗になったようだがな」
「え……? それは、どういう……」
「刀の封印が解けたあとは、紅葉がお前に成り代わって力を集める予定だったろうからな。しかしそれは叶わなかった……それだけでも、お前には意味があるだろう」
「そうでしょうか……」
「少なくとも、お前の為に戦ってくれる人がいる。それだけでも、何もいらないだろう。意味も、価値も、それが全てじゃないのか?」
ふと、殺生丸さんの顔が浮かぶ。文句を言いながらいつも一緒にいてくれた。あの人が本当は優しい人なことを、私は知っている。必要としてくれていることも……。
今だってこうして、私を逃がしてくれようとしている。