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犬夜叉 一重梅ノ栞

第14章 逃亡者の葛藤



「そんなに急いで、何処に行く?」

「……桔梗さんっ!?」


 立ち塞がるように立つ彼女を目の前にして、私は思わず足を止めてしまった。けれど早く急がなくては、急いで犬夜叉さん達のところへ行かなくては。


「私は今すぐ犬夜叉さん達を呼びに……っ」

「呼びに行って、それでどうするつもりだ?」


 桔梗さんが険しい顔で私を見つめている。彼女の周りには、何度か見たことがある白い生き物がふわふわと辺りを漂っている。


「犬夜叉に、助けてくれと懇願するのか? お前も所詮、か弱い人間の女ということか」

「……っ! 返す言葉も、ありません」


 その通り。肩の傷のせいで思うように刀を振るうことが出来ない、そうして諦めて自分のやってきたことは間違いだったんじゃないかって疑心暗鬼になって……殺生丸さんを置いてこの場から離れてしまった。

 それでいいわけないことくらい、私にもわかってる。わかってるけど……。


「でも、私じゃどうすることも出来ないんです! 今の……こんな、私じゃ……」

「そう決めつけているのは、自分だろう」


 桔梗さんは、私の頭を不意に撫でて冷たくも優しく笑いかけた。それは私を憐れんでなのか、小さな同情心からくるものなのか……そこまではわからなかったけど。

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