第14章 逃亡者の葛藤
「どうして、私は此処に来てしまったのでしょうか……」
「お前の前の玉依姫が、お前の魂を此処に呼び寄せたんだろう。お前は……まんまと刀を守っているとかほざいていた玉依姫の式神に騙されて、封印を解き力を集めさせられていたんだよ」
「そんな……っ、そんなことって……」
私が今まで必死にしてきたことは、全て無駄だったということ?
「一番の誤算はあれだな……お前の意思が、思っていたより強かったせいだ。そのせいで、前の玉依姫……紅葉とか言ったな。あいつの人格が、表に出てこれないみたいだな」
「え……?」
「覚えはあるか? 紅葉の人格に」
五鬼さんの言葉に、反応を見せた殺生丸さんを私は見上げた。どうやら、覚えがあるらしい。もしかしたら、それは私に肩の傷をつけた時にことなんだろうか……。私の意識が遠くになった時。あれが、紅葉さん……?
「その紅葉とかいう女の人格は、いつになれば消える?」
「殺生丸さん……」
「殺生丸とか言ったな、そんなの簡単だ。五つの力を完全に消し去ること、それしかない」
「それはどうしたらいいのですかっ!?」
「……」
五鬼さんはじっと私を見つめている。
「死ねばいいんだよ」
どくんっと心臓が高鳴った気がする。鳥肌が立って、凄く嫌な感じがする。
「玉依姫……魂ごと燃えて死ねばいいのさ」
五鬼さんは蒼い炎を纏った刀を何処からか出す。私は痛む肩を庇いながら、それでもなんとか刀を握って立った。ここで退いてはいけないと、そう本能的に思いながら。