「理想のイケメン」募集に、煙を纏う同期が立候補してきた。
第2章 理想アップデート
「俺、優しいんでツケでいいっすよ。
アズサさんが俺を『タイプ』って認めてくれるまで、無利子で溜めといてあげます」
「うわ、出た。一番タチ悪いやつじゃん。
それ、私が死ぬまで払えなさそうなんだけど」
あきれ果てて、飲むのを一瞬ためらったホットラテに口をつける。
すると、結城くんは少しだけ私の方に身を乗り出して、いたずらっぽく、でもどこか真剣なトーンで言った。
「じゃあ、その時は墓場まで追いかけますね」
「は?」
「それか」
結城くんは、私の目じっと見つめながら、にやりと笑った。
「うちの墓入ります? 永代供養つきっすよ」
ごふっ、とホットラテが変なところに入りそうになって、盛大にむせた。
何言ってんだ、このバカは。
「げほっ、……なっ、何言って、」
「あーあ、せっかく優しくしたのに、こぼしそうになってるじゃないですか。ほら、ティッシュ」
甲斐甲斐しくティッシュを差し出しながら、結城くんは私の背中をぽんぽんと叩いてくる。
その手が、やけに温かくて大きい。
……いかんいかん。ペースに飲まれたら負けだ。
私は一つ咳払いをすると、受け取ったティッシュで口元を拭き、わざとらしく深いため息をついた。
「悪いけど、アンタんちのお墓、遠慮しとくわ」
「えー、なんでですか。駅チカで日当たり良好ですよ?」
「そういう問題じゃない。
死んでからも、アンタの『今、優しくしてますアピール』を聞かされるの、絶対お断りだし」
我ながら完璧な受け流し。
よし、勝った。
だが、結城くんはショックを受けるどころか、むしろ楽しそうに目を細めてにやりと笑った。
「あはは! なるほど、そっちですか。
じゃあ、死ぬまでの間、『俺がタイプだ』って言うのを気長に待つことにします」
結城くんはひらひらと手を振りながら屋上を出ていった。
……本当に、バカだな。
誰もいなくなった屋上で、私は、温くなったホットラテを飲み干した。