「理想のイケメン」募集に、煙を纏う同期が立候補してきた。
第2章 理想アップデート
「あーあ、どっかに『身長180センチ以上、年収1000万以上、次男で、趣味が家事で、私を甘やかすことだけに生きがいを感じるイケメン』、落ちてないかなあ」
ベンチに寝転がり、青空を見上げながら、
私は以前よりもさらに具体的になった妄想を口にする。
「アズサさん、アップデートされてます。俺から遠ざかってる気がするんですけど」
呆れたような声とともに、紫煙が風に流れてきた。
横を見ると、いつものように結城くんが立って煙草を吸っている。
「気のせいじゃない? そもそも結城くんは、最初から圏外だし」
「ひどくないですか?
これでも最近、社内の女子から
『結城くん、最近なんか雰囲気優しくなったよね』って評判なんですよ?」
「へえ、よかったじゃん。
その『優しい雰囲気』とやらで、上司からの無理難題もスマートにかわせば?」
「それはそれ、これはこれです。
俺の優しさは、アズサさん専用のプレミアム仕様なんで」
結城くんはそう言って、携帯灰皿に煙草を押し付けると、私の寝転がるベンチの端に腰掛けた。
以前は私が足を曲げてスペースを作ったけれど、今は彼が座るのが当然のような顔をしている。
「はい、プレミアム仕様の優しさ、第一弾です」
彼が差し出してきたのは、コンビニのホットカフェラテ。
私がいつも飲んでいる、砂糖なし、ミルク多めのやつだ。
「はいはい、至れり尽くせりどうも。
で、いくら? 請求書、デスクに置いといて」
私がめんどくさそうに言うと、結城くんはそれを私の手元に置きながら、これ見よがしにドヤ顔を決めた。